金色のスプーン

わくわくしながら生きていく。

コンプレックス

記憶力のセミナーとは、コンプレックスとの対峙でした。

学生の頃の勉強が苦手という思い込みが、今でも足をずっと引っ張っていた。
普段の生活ではほとんどそんなこと思わないけど、歌の勉強をするときにやつは大抵現れた。
勉強って思ってるからね。たまらんわ。わからないって後ろの方でずっと囃し立てて、いつだってやる気を削いでいった。

今回も昨日出された宿題がどうにもやれず、死にたい気持ちで会場へ向かった。
言ってしまえば課題をやらなかっただけなのに、選択肢の中に死が入っているってとんでもないな。でも当事者はそんなことわからない。
会場で優しく話を聞かれたときにはもう涙目で、幼稚園児のようにぽろぽろ泣きながら「全部わからない。出来ない」と言った。
その先生がさ、すごいんだよね、責めること一言も言わないの。むちゃくちゃ優しいの。困った態度ひとつ表に出さない。さすが。
出来ない私の出来る部分に目を向けて、そこを認める言葉掛けを山のようにしてくれた。
ユーモアをだいじにする人だから笑いもバンバン取り入れて、ぎこちないながらもなんとか午前中がすぎ、セミナーは進んでいった。
私も段々慣れていって、何十単位の単語を連続して言えるようにもなったけど、最後の感想を書く頃にも、達成感は得られなかった。

一緒に受けていた子が先に帰り、書けない感想文とにらめっこしていた私に先生が言った。
「昨夜の宿題やってく?」って。

耐えられなくてまたぽろぽろ泣き出したけど、先生のそのとき話したことが、一番セミナー受けて印象に残ってる。
先生は、変わることが怖いことをわかっている人だった。
だから今は変わりたくない理由があるんだろうね。僕はどっちでもいいよ。ただ、出来ないからやらないって思い込んでるのが、もったいないとは思うんだけどね。

それから、やると決めた。約2時間かけて単語を覚えた。やってみたらあっさり出来た。奇跡的に!とか、何ということでしょう!とか、誇張表現が出番を見失うくらいに。そして私はそこで初めて達成感を得て、来てよかったって安堵することができたんだ。

出来ると思ってないから当たり前だ。
わからないところをわかるまで聞いたことはないし。
忘れないで、一歩前に出して。
その後のおうただってとっても楽しかったんだから。